眠りに悩む人へ不眠症を改善する7つの効果的な対策
不眠症には複数の類型があり、いずれも日中の生活に支障をきたす状態、病気であるとされています。原因には、ホルモンバランスの乱れ、生活習慣、物理的環境、心身・精神疾患由来等が考えられます。
本記事では、主な症状やその対策等についてご紹介します。
1.不眠症とは
不眠症とは、厚生労働省「生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット」によると以下の病気であるとされています。
・不眠症とは、入眠障害(寝つきが悪い)・中途覚醒(眠りが浅く途中で何度も目が覚める)・早朝覚醒(早朝に目覚めて二度寝ができない)などの睡眠問題であり、そのために日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する病気です。
・不眠症とは、その人の健康を維持するために必要な睡眠時間が、量的あるいは質的に低下し、そのために社会生活に支障をきたしたり、自覚的にも悩んでいる状態をいいます。
2.不眠症の主な症状
不眠症には様々なタイプが存在します。タイプが分かれば原因を探ったり、対応策を講じるための有力な情報となります。
①入眠障害
寝つきが悪い状態を指します。
寝床にはいって60分以上経過しても入眠できない状態とも言われています。
②中途覚醒
眠りが浅く、途中で何度も目が覚める状態を指します。
③早朝覚醒
早朝に目が覚めて二度寝ができない状態を指します。
④熟眠障害
熟睡したという満足感がなく、目覚めたときに睡眠不足を感じる状態を指します。
非回復性の睡眠と呼ばれる場合があり、寝ても回復感のない、質のよくない睡眠とも考えられています。例えば、慢性疲労症候群や短時間睡眠者などが挙げられるようです。
なお、熟眠障害は主観的で定量化が難しいため睡眠障害国際分類上では、不眠症状の定義から除外されているそうです。
⑤日中の症状
夜に睡眠をとっていても日中の眠気が強いという場合があります。これを過眠と呼んでいます。
過眠の原因大きく分けて2つあり、1つ目は睡眠中の身体の症状(睡眠時無呼吸症候群等)により、深く眠れず慢性的に睡眠不足となること、2つ目は脳の睡眠調節機能が上手くはたらかず(ナルコレプシー等)睡眠不足となることが挙げられます。
3.不眠症の原因
原因によって対処法も異なってきます。以下に主な不眠の原因例を挙げています。
3-1.ストレス、ホルモンバランスの乱れ
人間の脳(視床下部)は、心理的・肉体的ストレスの影響を非常に受けやすいです。脳のはたらきの一つに、「様々なホルモンを分泌させるための指令(各放出ホルモン)を出す」というものがあり、ストレスを受けると、脳が逆にホルモンの分泌を抑制する指令を出す場合があります。
例えば、メラトニンは睡眠、その他体温やホルモン分泌などの調節機能に深く関わっているホルモンですが、心理的・肉体的ストレスを受けると、このメラトニン分泌量に異常がおこる場合があります。
図1.睡眠・覚醒物質の働き
引用:田辺製薬株式会社.Suimin.net.”眠りのメカニズム”.
https://www.suimin.net/sleep/mechanism/cycle/#tab3
3-2.生活リズムの乱れ
生活習慣の乱れ、例えば昼夜逆転の生活が続くと、自律神経(自律神経系:交換神経系と副交感神経系の二部構成)のはたらきが乱れると言われています。
日中に活動するときは交換神経が優位となり、夜や休息時、睡眠時には副交感神経が優位になりますが、生活リズムの乱れ等で自律神経のはたらきが乱れると、交換神経の興奮状態が続き、副交感神経のはたらきも抑えられてしまうため睡眠の質が低下すると言われています。
3-3.運動不足
運動による適度な疲労は直接的に入眠を促し、良質な睡眠の維持に繋がります。しかし、運動は継続して習慣とならなければ持続的な効果が見込めないと言われています。負担が少なく長続きできる有酸素運動(ウォーキング、軽いランニング等)が推奨されています。
3-4.カフェイン・アルコールの過剰摂取
カフェインは鎮静作用のあるアデノシンという物質と化学構造が似ており、アデノシンに変わって受容体と結合してしまいます。これにより、アデノシンのはたらきが阻害され、神経を興奮させます。
図2.(右)カフェインの化学構造、(左)アデノシンの化学構造
引用:農林水産省.課カフェインの過剰摂取について.
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html
カフェインは適量だと、眠気解消などの効果がありますが過剰摂取すると、不眠をはじめ、動悸(心拍数の増加)、吐き気、興奮、イライラ等の症状を引き起こすことがあります。健康な成人だとカフェイン摂取量400mg/日が健康に悪影響を及ぼさない目安とされています(カナダ保健省)。
また、アルコールの過剰摂取も睡眠に影響を及ぼすと言われています。
睡眠は「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」で構成されており、およそ90分~120分周期でノンレム-レム睡眠を繰り返しています。
・レム睡眠(REM sleep)
▻急速眼球運動(rapid eye movements:REMs)と骨格筋(抗重力筋)の筋活動が低下する。
・ノンレム睡眠(non-REM sleep)
▻睡眠の深さ(脳波の活動性)により、4ステージに分けられる。覚醒中の身体運動量や精神負荷が増すとノンレム睡眠も長くなる(深くなる)と言われている。ノンレム睡眠中は副交感神経が優位である。
図3.健常成人の典型的な夜間睡眠パターン
引用:e-ヘルスネット.眠りのメカニズム.厚生労働省.
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-002.html
不適切な仕方でアルコールを摂取すると、睡眠後半でのノンレム睡眠の減少、レム睡眠の増加という効果がみられるそうです。つまり、深い眠りが減り、早朝覚醒が増えていきます。
さらにアルコールには利尿作用もあり、夜中に目が覚めてトイレに行きたくなる要因にもなっています。
他方、アルコールには神経系の過活動を鎮静させる効果もあるので、適切な時間帯に適切な量を摂取する等、アルコールと上手く付き合っていく方法を習得することがおすすめです。
3-5.寝室環境・睡眠環境の問題
人間は24時間の昼夜変化に同調し、体温やホルモン分泌等の体内環境を変化させる機能をもっています。この24時間周期のリズムを概日リズム(サーカディアンリズム)と呼んでいます。
朝日の光は概日リズムを早める方向に、夜の光はこれらを遅らせる方向にはたらきます。
自然光が入りにくい寝室環境だったり、深夜まで強い光(スマートフォンの光、街頭の明かり等)を浴びたりしていると、概日リズムを乱す要因になります。
その他、騒音や温度や湿度等も心地よい睡眠を妨げる原因となります。睡眠のための適温は20℃前後、湿度は40~70%程度と言われています。物理的に寝室環境を整えて、落ち着ける空間づくりも重要かもしれません。
3-6.精神疾患、身体疾患
不眠症は、精神疾患や身体疾患との合併で発症している場合があります。これらの疾患が根本的な原因で、不眠は副次的に生じることがあるようです。具体的な精神疾患、身体疾患は以下が挙げられます。
◎精神疾患
・うつ病、統合失調症などの神経症
◎身体疾患
・頭痛、発熱、腰痛、関節痛、神経痛など
・アトピー性皮膚炎、老人性皮膚疾患など
・感染症
・心不全、高血圧など
・脳血管障害などの血管性障害
・腹痛、下痢、嘔吐などの消化器疾患
・消化性潰瘍などの逆流性食道炎
・肝・腎不全、糖尿病などの内分泌系及び代謝障害
・頻尿
・肺炎、慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息などの呼吸器疾患
4.不眠症がもたらす影響
あらゆる事柄が原因となり不眠症は発症しますが、その影響も非常に大きいです。日常生活を送ることが困難になるような状態にもなり得ます。
①日中の機能低下による事故・リスク増加
日中に眠気や疲れが出て、集中力が低下したり、いらだってしまったりします。日中の活動に支障をきたし、仕事中や運転中に眠り込んでしまう可能性があります。
②精神面や身体面への影響
睡眠不足、不眠は日中の眠気や意欲低下、記憶力減退などの精神面で悪影響を及ぼしますが、自律神経系を始め身体面にも影響を及ぼします。具体的には体内ホルモン分泌のバランスが狂ったり、生活習慣病にかかりやすくなったりすると言われています。
精神疾患や身体疾患を抱えている方にとっては、不眠が続くと基礎的な身体機能が落ちるため悪循環に陥りやすくもなります。
5.不眠症の対策方法
快眠のためには生活リズムを見直すこと、睡眠環境を整えること等が重要と考えられています。以下にその具体方法を列挙します。
5-1.規則正しい生活リズム
生活習慣は大きく「睡眠」、「食事」、「運動」に分類されます。
睡眠においては、成人の場合、6時間~8時間程度の睡眠時間を確保すること、就寝1~2時間前に入浴し体を温めてから寝床に入ること、日中に日光を浴びて体内時計を調節すること等が推奨されています。
5-2.適度な運動
適度な運動をすることでリフレッシュに加えて、自律神経が整います。15分から30分程度のウォーキングやヨガ、ストレッチ等が効果的と言われています。
また、就寝3時間前くらいの夕方から夜にかけて運動することが効果的と言われています。脳の温度を一過性に上げることで、入眠の際の脳温の低下量が大きくなるそうです。
5-3.リラックス方法の実践
リラックス方法の具体例として、趣味に没頭する、友達や家族との時間をもつ、ゆっくり湯船に浸かり体を温める、適度な運動をする、アロマ等好きな香りでリラックスする等々、様々な方法があります。いずれも自律神経のはたらきを正常に戻し、ホルモンバランスをととのえるために非常に有効です。
5-4.食事と飲み物の管理
食事においては、主食・主菜・副菜を組み合わせバランスの良い食事が推奨されています。「朝からあまり食べられない」という方は、まずは水や牛乳等を飲んで胃腸を動かすこと、乳製品や果物等食べやすいものから食べてみてはいかがでしょうか。
5-5.光と電子機器の管理
日中に光(1,000ルクス以上の照度の光)を多く浴びることで夜間のメラトニン分泌量が増加し、入眠が促進されると言われています。また、就寝の2時間程前からメラトニンの分泌が始まると言われており、これ以降に短波長校(ブルーライト)等の強い光を浴びるとメラトニン分泌を抑制されると言われています。日中にできるだけ日光を浴び、就寝時にはできるだけスマートフォン等を持ち込まず暗くして、眠れる環境づくりに努めましょう。
5-6.睡眠補助グッズの活用
入眠しやすい環境(照明、温度、湿度、香り)を整えるためのグッズや家具家電、体温を上げるグッズ、睡眠中の体勢を整えるための寝具等、様々な補助製品があります。
例えば、寝具には寝ているときの保温と寝相を保つため、吸湿性・放湿性が高く保温性が良いものが適している等ポイントがあるようです。
図4.快眠できる枕の高さ
引用:e-ヘルスネット.快眠のためのテクニック-よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係.厚生労働省.
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-003.html
図5.正しい寝姿勢を保てるマットレス・敷き布団の硬さ
引用:e-ヘルスネット.快眠のためのテクニック-よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係.厚生労働省.
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-003.html
6.医療機関での治療
セルフケアで不眠が改善されない場合は迷わず専門の医療機関へ相談することをおすすめします。
医療機関での治療と聞くと、薬物療法が思いつきやすいかもしれませんが、認知行動療法等のカウンセリングを実施している医療機関もあるようです。いずれにしても、不安があればまずは普段受診している内科へのご相談から適切な処方を紹介いただけると不眠改善へと繋がりますね。
7.まとめ
不眠とはから始まり、主な症状、原因と影響、対策等についてご紹介しました。
人間の生命維持活動に必要不可欠な睡眠が十分に取れない場合、日常生活に支障をきたします。
原因は、精神疾患や身体疾患、生活習慣や環境等あらゆる事象が考えられていますが、未だ解明されていない原因もあります。だからこそ、セルフケアで改善されなければ、早めに専門機関へご相談されることをおすすめします。
質の良い睡眠を取れると頭も身体もスッキリして、日々の活力にも繋がりますね。本コラムが、皆様にとってより良い日常生活を営むためのきっかけになれば大変嬉しく思います。
最後までお読みくださりありがとうございます。
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